翼の誘導抵抗
翼における誘導抵抗とは、有限幅の翼を過ぎる流れを考えたときに、後引き渦のために後流に下向きの流れが生じることで発生する抵抗のことです。
もう少し丁寧に誘導抵抗について考えます。
まず、実際の翼は有限な翼幅をもちます。そのため、翼が無限に長い翼幅をもつと考える二次元翼の場合と実際の翼では異なる部分があります。
実際の翼では、翼幅が有限であるため、翼端では圧力の高い下側から、圧力の低い上側へ流れが流れ込もうとします。
翼の部分では、渦は翼に拘束されています。しかし、翼端では渦は翼からはみ出し、風に流されて下流まで延びていると考えられています。
この渦にはそれぞれ呼び名がついています。
翼の働きを表す渦は翼に束縛されているため、束縛渦といわれます。また、翼端から下流に流れ出る渦は自由渦、もしくは後引き渦といわれます。
そして、この束縛渦と自由渦を合わせた渦の形状は馬蹄形渦、もしくはU字型渦といわれています。
この馬蹄形渦の作用によって、翼付近には下向きの速度が誘導されます。
この誘導速度によって、翼は元の速度ではなく、の大きさで、元の方向から、だけ、ずれた方向から風を受ける状態になります。
この方向は、元の迎角をだけ減らす方向です。
つまり、三次元性を考慮すると、迎角は二次元の場合よりも少し小さくなります。
クッタ・ジューコフスキーの定理を考慮して、の方向に垂直に働く揚力をとします。を翼の進行方向に垂直な方向の揚力と翼の進行方向の抵抗に分解すると次のようになります。
2つ目の式に、翼の三次元性によって翼の進行方向に抵抗が誘導されることが表されています。この抵抗のことを誘導抵抗といいます。
誘導抵抗は、三次元性によって、必然的に生じるものです。