ベルヌーイの定理
ベルヌーイの定理とは、流管の断面積が変化しても、すべての点で全圧は一定であり、動圧と静圧は互換性をもつというものです。
流体が動くことによって働く力を動圧といいます。例えば風に向かって歩くときに体に感じる力が動圧です。一方で、風がなくても体には空気の圧力(大気圧)がかかっています。この静止している流体の圧力が静圧です。
つまり風に向かって歩く人には動圧+静圧がかかっていることになります。この動圧と静圧をあわせたものを全圧といいます。
ベルヌーイの定理を考えるために、管の中を水が流れている場合を考えます。
管の中を流れる水は細くなっているところでは速く流れ、太くなっているところではゆっくり流れます。管の中を流れる水がもつ運動エネルギーが変わらなければ、速く流れるところでは管の内側にかかる圧力(動圧)は小さくなり、遅く流れるところでは管の内側にかかる圧力(動圧)は大きくなります。
しかし全圧は管の、どの部分でも一定であるため、動圧が小さいところでは静圧が大きくなり、動圧が大きいところでは静圧が小さくなります。
このように管の断面積がどのように変化しても、すべての場所で全圧は一定であり、静圧と動圧はトレード関係にあるという定理がベルヌーイの定理です。
静圧を、流速を、密度を、全圧をとすると、次の関係が成り立ち、この式のことをベルヌーイの式といいます。
ベルヌーイの定理と揚力
飛行機の翼に揚力が発生する現象もベルヌーイの定理で説明することができます。
翼は上面がふくらんだ形をしています。そのため、前からやってきた気流は、翼前縁で加速され、翼の上面の前縁に近い部分では流速が速くなって静圧が小さくなるため、他の部分よりも大きな負圧が発生し、翼が上に吸い上げられることで上に向かう力が発生します。
また、翼の後縁から、やや下方へと方向を変えられる流れが発生し、この反作用も加わります。
ベルヌーイの定理とピトー管
飛行機の速度計(対気速度計)にはピトー管というものが使われています。これは、飛行機の機首方向に向かって設置された管で、先端から全圧、側面から静圧を取り入れるようになっています。
飛行機に当たる気流の全圧と静圧の差が動圧となります。飛行機の対気速度計はこの動圧を速度に換算することで速度を求めます。