翼の平面形と翼幅、翼面積、翼弦、テーパー比、アスペクト比

翼の空気力学的な特性を考える際は、翼を3つの幾何学的な要素に分けて考える。

  1. 翼の平面形
  2. 翼の断面形
  3. 空間的配置

翼の平面形について

翼の平面形とは翼を真上から見たときの形状である。

その形により、矩形翼、テーパー翼、楕円翼、後退翼、デルタ翼などの呼び方がある。

翼の平面形に関する用語

翼の平面形に関する専門用語がいくつかある。

翼幅(span)は翼の進行方向に垂直な長さのことである。つまり、翼幅は翼の左右方向の長さのことである。

翼面積(wing area)は、翼の平面への最大投影面積と定義される。定義上は胴体と重なる部分の面積も翼面積に含められる。

翼弦(wing chord)もしくは翼弦長は、翼の進行方向の長さである。より正確に定義すると次のようになる。翼の平面形の対称線に平行な直線が前縁および後縁によって切り取られる部分の長さである。矩形翼では翼弦は一定である。しかし、他の形状の翼では翼弦が一定ではないため、幾何平均翼弦や空力平均翼弦を考える。

テーパー比(taper ratio)もしくは先細比は翼端の翼弦と翼中央の翼弦の比である。テーパー比を\lambda、翼端の翼弦をc_t、翼中央の翼弦をc_rとすると次の式で計算できる。

\displaystyle \lambda=\frac{c_t}{c_r}

アスペクト比(aspect ratio)もしくは縦横比は、翼幅と幾何平均翼弦の比である。アスペクト比が大きいほど細長い翼である。アスペクト比をA、翼幅をb、幾何平均翼弦を\overline{c}_g、翼面積をSとすると、次の関係が成り立つ。

\displaystyle A=\frac{b}{\overline{c}_g}=\frac{b^2}{S}

一般的に、アスペクト比が大きいほど誘導抵抗が小さく、揚抗比が大きくなるといわれる。

翼軸はテーパー翼の中央の前縁から \frac{1}{4}の翼弦の点( \frac{1}{4}弦点)と翼端の前縁から \frac{1}{4}の翼弦の点( \frac{1}{4}弦点)を結ぶ直線のことである。

後退角は翼軸の平面形への射影が、翼の対称面に垂直な直線となす角のことである。

幾何平均翼弦と空力平均翼弦について

幾何平均翼弦(geometric mean chord)は平面形の幾何学的な要素のみから考えられる。幾何平均翼弦を\overline{c}_g、翼面積をS、翼幅をbで表すと、次の式で幾何平均翼弦を求めることができる。

\displaystyle \overline{c}_g=\frac{S}{b}

 空力平均翼弦(mean aerodynamic chord、MAC)は空力学的な要素を考慮してある代表翼弦である。

空力平均翼弦を\overline{c}_a、翼面積をS、翼幅をb、翼の対称面から翌幅方向(直角方向)の距離をy、距離yにおける翼弦をcと表すと、次の式で空力平均翼弦を近似的に求めることができる。

\displaystyle \overline{c}_a=\frac{2}{S} \int_0^{\frac{b}{2}}c^2dy

テーパー翼の場合は、テーパー比\lambda、翼中央の翼弦c_rを用いて次の式により近似的に求めることができる。

\displaystyle \overline{c}_a=\frac{2}{3} c_r \left(1+ \frac{\lambda^2}{1+\lambda}\right)